STORY
2016SS365
CROWD
Episode01<2016SS>3歳のボク
スイミーって読んだことある?
みんなで集まって大きなサカナと戦うお話。
ボクはもう何度もママに読んでもらった。大好きなお話。
僕の家から見える丘の向こうの牧場にはヒツジがいてね、
コリー犬のレオニがバウワウ吠えて、ヒツジの群れはみんなで
あっちにいったりこっちにきたり。まるで一つのイキモノみたい。
でも大きなサカナの形にはならないんだ。
夕方にお空にモワモワした動く雲を見たよ。
ママに聞いたらフィンチって鳥の群れなんだって。
ママに聞くまでボクはキリリコロロってよんでたよ。
みんなで固まってお空を飛んで、
いったい何と戦っているんだろう?
ボクは夜が怖い。ぬいぐるみや大好きなブランケット。
キラキラのビーズやガラス玉やスパンコールのつまったジャムのビン。
ママに絵本を読んでもらってモノガタリを集める。
たくさんのモノを集めて、夜と戦わなくっちゃ。
Episode02<2016SA>14歳のオレ
海に潜る。陸上の世界と水中の世界の境界線。
オレは水中では長く生きられない。
海を自由に泳ぐサカナ達は陸上では長く生きられない。
あの世とこの世の境界線。タイムリミットのある世界に潜る。
波にたゆたい魚たちが泳ぐ。
群れで泳ぐ魚はコドモの頃によんでもらったスイミーのお話のよう。
ゆらゆらと形を変えながら泳ぐ。
スイミーの話はスイミーだけが仲間と違う色をしているというお話。
自分だけが違うから役に立てる。
全てのものには与えられた役割がある。
海の中には様々な形や色で溢れている。いし珊瑚は脳みそのようなカタチ。
イソギンチャクは目のようなカタチ、海ウシは耳。巻貝は耳の中のカタチに似ている。
海の生き物を集めれば人間が出来るのかもしれない。
それとも、人間の体の中には大きな海があるのかもしれない。
Episode01<2016AW>88歳のワタシ
ヒザの上でクスクスと笑う孫に絵本を読む。
小さなサカナが旅をして賢くなっていくというお話。
悲しみを越えて、旅をして、自分の居場所をつくるお話。
人生は沢山の「すき」を集める時間の群れ。
多くの選択肢からひとつひとつ選ぶ。
ツギハギになっていく価値観の中で大切なものを選んでいく。
世界は群れで溢れている。時間も群れ。言葉も群れ、宇宙も星の群れ。
人は家族を作り、家族が集まると街になる。街は社会をつくり、国は世界を作る。
群れるという事は大きくなる事ではない。変化し備えるという事。
今、この星で一番大きな群れは人間となった。
インターネットで世界がつながり、遂に人間は世界中で一つの群れとなった。
人は何に変化しようとしているのか?そして、何に備えているのか?